ここで、僕が入学した職業訓練校の学習内容について説明しておく。
期間は半年間。Web系のITエンジニアになるために必要な、HTML、CSS、JavaScript、PHPといったプログラミング言語を一通り教えてくれるというものである。(厳密にはHTMLとCSSはプログラミング言語ではないが、このときは全部プログラミングだと思っていた)

授業初日。ピンク先生が取り出したのは、基本情報技術者試験の参考書であった。もちろん僕はパニックである。
買わされた教科書の中に上記の参考書もあることには気が付いていたが、漫画のような本であったし、きっと副読本的な存在なのだと思っていた。職業訓練校で貰った学習計画表にも、基本情報をやるなんて書いていなかった。
そういうものなのか…。
僕は力なく参考書を眺めてみた。そもそもめちゃくちゃ分厚いし、漫画のようなふりをしているが、書いてあることは非常に難解な気がする。しかも「基本情報技術者試験」って、国家資格なのか。この自堕落な僕のような狐が、「国家資格取得」などという偉業を成し遂げられるとはとても思えない。
対象としては、すべての社会生物。どんな職種であっても身に着けて欲しいIT基礎知識ということだ。でもね、舐めてかかると結構難しいよ
「基本情報技術者」と比較して随分可愛げのある名前だが、それゆえに舐めてかかる者も多いのかもしれない。しかしこのITパスポートとやらを、半年以内に取得せねばならぬようだ。それができねばどうなるのだろう。


さて、ここからは現在エンジニアとして働いている30歳の僕の目線で書いてみる。結論から述べると、僕は職業訓練校在学中にITパスポートを取得することができた。このときにITパスポートを取ったことで本当にメリットがあったのか、ということについて書いていく。
メリット
- 就活で微妙に評価された
- 就職後にITパスポート取得せよというプレッシャーがなかった
- 就職後の研修で「あ、あれITパスポートでやったとこだ!」という進研ゼミ的現象が多々あった
デメリット
- 資格報奨金が出なかった
あくまでも僕の例だが、メリットとデメリットを分けるとこんな感じである。
職業訓練を出て最初に就職した会社では、未経験者の採用にも力を入れていた。未経験枠で入社してくる者ですでにITパスポートを持っている者は稀だったようで、入社試験のとき、ちょっと喜ばれた。
それが合否に直結した感触はないが(おそらくなくても入社はできた気がする)、入社してからもなんとなく「こいつ、やる気あるな」「新入社員の中では期待できるやつ」という扱いだった。(小さな小さな会社の中の物語)
そしてこの会社では半年ごとに目標を設定し、それに向けて努力することが義務付けられていたのだが、新入社員の最初の目標は有無を言わさずITパスポート取得であったため、数匹の同期たちはスパルタンな研修を終えたのち、へとへとになりながらITパスポートの勉強をせざるを得なかった。僕は先んじて取得していたおかげで、そこから抜けられたのである。
あとは純粋に、ITパスポートの知識は役に立つ。

たまにベテランエンジニアなどが「ITパスポートは簡単すぎて役に立たぬ!」と言っているのを見かける。確かに「知っていて当たり前」とされる知識に過ぎないのかもしれない。しかし「知っていて当たり前」の知識すらないとなると、仕事をしていて定期的に肩身の狭い思いをする。(3年目になった今でもそういうことはよくあるわけだが…)
「知っていて当たり前」の知識を体系的に学べるので、ITパスポートの勉強はしたほうが良いと思う。というか、この勉強からは逃れられないと思う。ので、どうせ勉強するなら資格も取っちまったほうがお得である。
デメリットは1つしか浮かばなかった。
僕の会社では資格奨励制度があり、ITパスポートを取得すると金一封いただけたのである。僕は入社前に取得していたが故に何も貰えず、ちょっと損した気分であった。

ちなみにIT業界では、「資格奨励制度」を設けている会社が多い。そのため入社前に「ITパスポート絶対合格できるぞ!」というところまで仕上げておき、入社後速やかに受験するというのも1つの手であろう。
というわけで、30歳の僕からは以上である。