キラキラした素敵無敵なプログラミングスクールはいくつか存在したが、どこもそれなりの学費が必要であった。
27歳当時の僕はほぼ文無しと言って差し支えなく、実家暮らしでなければ到底生きられなかったであろう。とてもプログラミングスクールに通う費用を捻出することはできない。親に借りることが叶わぬのなら、凄腕エンジニアになる夢もまた、叶わぬ。スタバ、MacBook、黒縁眼鏡…。さらば…。

僕は母に命じられるままに、生まれたての小鹿のような足取りでハローワークの門を叩いた。僕のような繊細な若者を悪鬼蔓延る地獄の企業へ押し込むような、そんな職員しかいないのではあるまいか。非常に不安である。しかしこのまま帰宅すれば、悪鬼と化した母親から、どのような仕打ちを受けることやら。行けども地獄。引いても地獄。
結論から書こう。
心配していたようなことは何も起こらなかった。ハローワークの職員さんはとても親切で、僕の拙い話を熱心に聞いてくれた。

無料でプログラミングの勉強ができる。それどころか、場合によっては金を貰いながら勉強できるだと…!?そんなうまい話があるのか。詐欺かもしれない。気をつけろ。いや、ここハローワークだし。ほ、本当なのか…!?
良かったらご検討ください

差し出されたチラシを見て、僕は我が目を疑った。
端的に言うならば、ダサい。

いったいどうすればこんなデザインでチラシを作ろうということになるのか。五流と名高い僕の母校(狐狸美術大学)の学生でも、こんな色使いはしないだろう。文字も読みにくいし…。
燦然と輝いていた民間のプログラミングスクールとはかけ離れている。かけ離れている…が、僕に残された選択肢は3つしかない。親をなだめすかして独学でやるか、エンジニアを諦めて片っ端から就活するか、この職業訓練校とやらの門を叩くか。
あ、それから職業訓練校に入学するには、国語、数学、英語の筆記試験と、あと面談がありますので、よろしくお願いします
一難去ってまた一難。試練は続く。