僕の名は狐小路フォ吉(きつねこうじふぉきち)である。
今日からブログを書き始めるにあたり、まずは簡単な自己紹介を記しておく。
- 名称:狐小路フォ吉(きつねこうじふぉきち)
- 年齢:30歳
- 種族:キタキツネ
- 家族:父、母
- 職業:システムエンジニア
これが僕のすべてである。
現在ではシステムエンジニアとして細々と暮らしているが、ちょっと前まではいわゆるニートであった。僕が何故ニートであったのか、そしてどういった因果でシステムエンジニアとして労働力を提供するに至ったのか。まずはそこんところを書いていきたいと考えている。
狐狸美術大学(通称:コリ美)を卒業した。我が母校は己の名を間違えたとて入学可能の五流大学と噂されているが、事実である。23にて野に解き放たれた僕は「何者かになれるやもしれぬ」という淡い期待のもと社会の荒波から断絶された子供部屋にて芸術的思索に没頭した。

25の年、両親の僕に向ける顔つきが険しくなっていくことに気が付いた。家に金を入れぬ。しかし飯は食う。という僕の行為について、生み出した責任と目減りする貯蓄の狭間で苦しんでいる様子であった。

僕の芸術的思索により生み出された作品は、日々脳内を忙しく駆けずり回ったが一度も外に出たことがなく、こういうのを世間様では「妄想」と呼ぶのだと、最近知った。

僕は元来平和主義者で、大切な両親に辛苦を強いることを良しとしない。かといって、安心安全なこの子供部屋という小宇宙から躍り出て、悪鬼蔓延る社会の荒波でサーフィンできるほど強くもなかった。

そこで偶然出会ったのが、ブログである。
ブログを書いて広告を貼っておくと、金が稼げるというのである。僕は飛びつき、日々食べたお菓子について感想を書き連ねたところ、とある新発売のお菓子の記事が大きく注目された。子供部屋から一歩も外に踏み出すことなく、ちょっとした小遣いが稼げてしまったのである。
僕はブログの勉強を始めた。己のブログに他社商品の広告を貼って収入を得る、いわゆる「アフィリエイト」で生きていこうと考えたのである。まるでボトルメールのように、ネットの海を僕の駄文が流れまくった。一時期、少しだけお金が稼げた。両親の顔つきも和らいできた。
栄枯盛衰。
目覚めると、僕のブログはすべて消えていた。
夢落ちではない。
存在自体が消えていたわけではなく、検索エンジンから姿を消していたのである。昨日までは、「おいなりさんサプリ ダイエット」などと検索すると1番最初に表示されていた僕のブログが、ない。
調べてみたところ、それは検索エンジンのアップデートが原因であった。一言で説明するならば、「信頼できないブログの検索順位は下げます」ということである。
こうして僕は再びニートとなり、両親の眉間にも皺が復活した。

その夜 僕は家族裁判にかけられ、有罪となった。労働に励み家庭に貢献するか、さもなくば速やかに群れを去るよう言い渡されたのである。