私は趣味でニードルフェルト人形を作っている。当ブログ「はしご座」も、もともとは自分の作った人形たちを紹介する(?)目的で始めた。一眼レフカメラを始めた理由も、人形たちを撮りたかったからだ。
Nikon Z fc(通称・カメラ子)が我が家に来た日、わくわくしながらシャッターを切った。参考にしていた教本では、Aモード(絞り優先モード)を推奨していたので、教わった通りAモードに設定したのだが、写真を見て驚いた。
暗い。おまけにブレている……。
「どんなに撮っても暗いし、ブレちまう」
夫に報告した。夫はカメラ経験者でもなんでもないが、近くに存在していたのでとりあえず頼ってみたのだ。同じ条件で夫にも人形を撮影してもらったら、暗くはあったがブレてはいなかった。
「な、なぜブレぬ」
「脇をしめて、カメラをがっちり固定すればブレない」
なるほどと思って脇をしめてカメラをがっちり固定した(つもりだった)が、やはり何度やっても同じこと。人形はピクリとも動いていないはずだが、どういうわけだがカメラの中の人形たちは小刻みに震えている様子である。
「シャッターを押すときに震えているし、揺れてるぞ」
「なぬ、ついに魂が宿ったか」
「人形のことではない」
恐ろしいことに、シャッターボタンを押す力が加わった際にカメラを支えきれず、私自身がプルプル震えているらしい。こんな脆弱な肉体でカメラに手を出すなぞ、100年早いということなのか……。
「なんとなくだが、シャッターの音が遅い気がするぞ」
夫が呟いた。
「シャッターボタンを押してから、音が出るまで随分かかっているじゃないか」
言われてみればそんな気もする。
さっそく教本で調べてみると、シャッタースピード(SS)なるものが関係しているようであった。前置きが長くなったが、ここからが本題である。
シャッタースピード(SS)で時間を切り取る
シャッタースピードとは、その名の通り「シャッター速度」である。
シャッタースピードが速いほど、一瞬を切り取った写真が撮れる。たとえば走り回る犬や子供をピタッと止めて、かわいい瞬間を写真に閉じ込めるのだ。
反対にシャッタースピードが遅いほど、動きのある写真が撮れる。流れる水や走る人など、「動き」そのものを写真に収めたい場合に有効だ。つまり意図的なブレ写真である。
- シャッタースピードが速い:ブレにくい
- シャッタースピードが遅い:ブレやすい
シャッターを切ってから実際に写真が撮影されるまでの時間が短いほうが、ブレにくくなるのは頷ける。
被写体と撮影者、どちらも微動だにせず長時間構えていられるならシャッタースピードが遅くてもブレないのだろうが、私のようなヤワな人間には厳しい話である。
先述したように、もともと人形をメインで撮影するつもりであったため、動くものを撮る気はなかった。教本にもシャッタースピードについて記載されていたが、関係なかろうと読み飛ばしてしまったのだ。しかし被写体が動かずとも、己が動いてしまっているとは盲点であった。シャッタースピードは静物撮影においても無視できない。
シャッタースピード(SS)は明るさに影響する
教本で推奨されていたAモードは、絞り優先モードのことである。絞りとは何か?というところは前回の記事を参照していただければ嬉しい。
絞り優先モードは、絞りを自分で設定できるということだが、シャッタースピードがオートになる。
冒頭で私が人形を撮っていた部屋は窓のない玄関で、小さな電球1つしかない空間であった。そんな薄暗い部屋で被写体をどうにか写し出すべく、カメラ子はシャッタースピードを極限まで遅くしていたらしい。
なぜか。それはシャッタースピードが明るさにも影響を及ぼすためである。シャッタースピードが遅いということは、それだけ光を取り込んでいられる時間が長いということである。反対に、すぐにシャッタースピードが速いということは、一瞬しか光を取り込むことができない。
このあたりの理屈は結構わかりやすいと思う。少なくともF値のボケに関する理屈よりはすんなり飲み込めた。
Sモードでの室内撮影に大苦戦
カメラ子にはAモード(絞り優先モード)のほかにSモード(シャッタースピード優先モード)があった。Aモードだと意図せずボケてしまうので、Sモードに切り替えて撮影してみた。
闇。
圧倒的な闇がそこに広がっていた。手に入れて1日でカメラを壊してしまったのかと本気で思った。教本により、シャッタースピードは明るさに影響すると知ったため、さらにシャッタースピードを上げてみたが、かろうじて影のようなものがわかるようになっただけで、とても写真と呼べる代物ではない。
そこで、ISO値というものをあげてみた。
ここでは詳細は割愛するが、ISO値を上げることでも写真は明るくなる。しかしISO値を上げすぎると画質が粗くなるらしい。最近のカメラは優秀なので、少しくらいISO値を上げたくらいでは、画質はほとんど変化しないらしい。
私には「らしい」としか言えないが、とにかく明るくなるということだけは本当である。
ISO値とシャッタースピードを駆使することで、ようやく人形の姿がわかる写真が完成した。
余談:屋外撮影でわかるMモードの魅力
ある日、たまには外で撮ってみようじゃないかと屋外撮影に挑戦してみた。憧れの玉ボケ写真を撮りたい。そんな思いでシャッターを切り、出来上がった写真を見て度肝を抜かれた。
写真が真っ白である。太陽とはやはり偉大な存在で、この世界をとんでもない光で包んでいるということを思い知った。
私は教本に従い、できるだけAモードで撮影するようにしていたので、この日も絞り手動、シャッタースピード自動。ISO値を100まで落としたが、まだまだ明るい。空が白すぎる。そこで渋々F値を上げて明るさを調整した。
ある程度調整したところでようやく空が青くなってきたが、そもそもF値を上げすぎたらボケ写真が撮れない。その日はすごすご退散したが、帰宅してみて思い至った。
シャッタースピードを上げれば良かったのでは?動く被写体を撮る予定がないのであれば、Sモードにしてシャッタースピードを調整し、そこで明るさ調整をすれば、F値は自由に調整……できない。Sモードにしてしまえば絞りは自動である。
ついにやるか……マニュアル。
なんとなくマニュアルって難しそう……と思っていたが、そんなことはなかった。
小難しいことはわからないが、Mモード(マニュアル)にするだけで、シャッタースピードとF値の両方を自由に調整できる。調整をミスってヘンテコ写真ができることもあるが、それはそれで楽しい。
最近はもっぱらMモードで撮影して、たまに「ようよう、君だったらこれをどう撮るんだい?お手本を見せとくれよ」などとカメラ子に挑戦するときだけ、AUTO(全自動)撮影している。個人的に、AモードやSモードは使いこなせなかった。今のところMモードが楽しい。
まとめ
シャッタースピードとはその名が示す通りシャッターの速度のことである。
シャッタースピードが速いほど一瞬を切り取れるが、光を取り込める時間も減るので暗くなりがちだ。
一方でシャッタースピードが遅ければ、シャッターボタンを押してもなかなか撮影されないということになる。そうなるとやはりブレやすくなるが、「動き」をメインに撮影する「ブレ写真」を撮るには必要なモードである。さらに、光を取り込んでいられる時間が長いので、より明るくなる。
- シャッタースピードが速い:暗いがブレにくい
- シャッタースピードが遅い:明るいがブレやすい
私は基本的に静物撮影メインで取り組んでいるため、あまりブレたくない。そのためシャッタースピードは速めに設定しているが、暗い室内だと深淵ばかりが広がる真っ暗写真になることがあるので、ISO値やF値と組み合わせてバランスを調整することが大切だと学んだ。